
SNSで煌びやかな生活を見せびらかす代償は、あまりにも大きかった。
12月25日、東京地検特捜部がインフルエンサー宮崎麗果こと黒木麗香被告を法人税法違反などで在宅起訴した。
脱税額は約1億5700万円。架空の業務委託費を計上し、3年間で約4億9600万円もの所得を隠していたという。
夫は元EXILE黒木啓司。父は元参議院議員の白眞勲。華やかな経歴の裏で繰り広げられていたのは、悪質極まりない脱税スキームだ。
年商25億円を誇り、インスタグラムのフォロワーは47万人。5児の母として子育てをしながら実業家としても活躍するワーキングマザー。
そんな輝かしい肩書きで紹介されてきた宮崎被告だが、その収入の一部は正しく国に納められることはなかった。
報道によれば、宮崎被告は知人を通じてB勘屋と呼ばれる相羽友介被告を紹介してもらい、偽の領収書の作成を依頼していたという。
B勘屋とは、取引があったかのように装うため偽物の領収書を用意する人物のこと。
こうした手口で架空の業務委託費を計上し、会社の所得を意図的に少なく見せかけていた。

SNSが裏目に出た承認欲求の末路
宮崎被告の失敗は、国税庁がSNSをチェックしているという事実を軽んじたことにある。
結婚記念日にフェラーリの納車を報告する投稿。エルメスのバーキンやブランド品を身にまとった写真。高級ステーキハウスでの女子会。
わたしたち一般国民から見れば羨ましい限りの生活ぶりだが、国税庁から見れば格好の調査材料だった。
実際、国税庁は会社経営者のSNS投稿を根拠として会社の収支を確認することがあるという。
宮崎被告本人もそのことは知っていたはずだ。それでも承認欲求には勝てなかった。インフルエンサーとして活動し続けるには、フォロワーに夢を見せ続けなければならない。新しいブランド品を身につけ、豪華な生活を投稿することで、さらにフォロワー数を増やし、広告料収入につなげる。そのサイクルから抜け出せなかったのだろう。
ところが直近では、セレブな生活ぶりがわかる過去の投稿が少しずつ削除されていたという。フェラーリ納車の投稿も、いつの間にかこっそり消えていた。国税庁の調査が入ったことを知り、証拠隠滅を図ったのではないかと疑われても仕方がない。
宮崎被告は2024年7月のインタビューで「自分のありのままを発信する責任がある」と語っていた。
ならば税務署にも"ありのまま"を申告すべきだった。この言葉の軽さよ。

父・白眞勲と夫・黒木啓司の立場
宮崎被告の父・白眞勲氏は、朝鮮日報日本支社支社長から日本国籍を取得し、参議院議員に当選した人物である。
内閣府副大臣や北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会委員長などを歴任した。娘の脱税事件について、父としてどう説明するのか。
夫の黒木啓司氏は、宮崎被告との結婚から約半年後にEXILEを脱退し、2022年10月末で芸能界から引退している。
引退の理由は年齢や体力とされているが、宮崎被告の事業を手伝うためという見方もあった。
夫婦でフェラーリを1台ずつ所有できるほどの財力。その原資が脱税で得たものだとしたら、黒木氏は何も知らなかったと言えるのだろうか。
現時点で父や夫が捜査対象になっているという情報はない。しかし、周囲の人間関係を含めて徹底的に調査されるべきだ。6億円もの所得を隠し、1億5700万円もの税金を納めなかった行為は、単なる申告ミスでは片付けられない。
わたしたち国民は真面目に働き、きちんと税金を納めている。消費税も所得税も住民税も、逃れることなく納めている。それなのに年商25億円もある実業家が、B勘屋まで使って脱税していたとは。同じ日本国民として許せない。
国税関係者によれば、急増するインフルエンサーや動画配信者は、若くしてスマホ1台で大金を得てしまうことで、納税意識の低い者も多いという。
申告漏れや所得隠しは、水面下でかなりあると見られている。国税庁はAIも活用しながら調査を続けていくとのことだ。
脱税で得た資金は、ブランド品の購入や会社の事業費用に充てられていたとされる。つまり、インフルエンサーとしてのイメージをさらに上げるために、脱税した金を使っていたわけだ。フォロワーを増やし、広告料収入を得るために。なんという皮肉だろう。
宮崎被告は12月24日、インスタグラムで「過少申告のご指摘を重く受け止め、深く反省している」とコメントした。修正申告と納税に速やかに対応するとも述べている。しかし、この期に及んで「過少申告」という言葉を使うあたり、事の重大さを理解していないのではないか。6億円の所得隠しと架空業務委託費の計上は、ミスでは説明のつかない悪質な脱税行為である。

インフルエンサーという職業が悪いわけではない。
問題は、承認欲求に負けて法を犯し、納税義務を怠ったことだ。
Z世代にとってインフルエンサーは憧れの職業だという。
だからこそ、こうした事件が若者に与える影響を考えなければならない。
宮崎被告のフォロワーたちは、きらきらした生活に憧れてついていたはずだ。
その憧れの対象が、実は脱税で得た金で成り立っていたとしたら、彼女たちはどう思うだろう。
応援していた人たちへの裏切り行為でもある。
これから裁判が始まる。宮崎被告がどこまで罪を認め、どう償っていくのか。注視していきたい。
そして国税庁には、同様の事案を徹底的に摘発してほしい。
真面目に税金を納めている国民をバカにするような行為は、断じて許されない。

