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モンチッチ50年の重みVSラブブ1年で人気失速の軽さ 投機バブルの末路が示す日本玩具文化の底力

モンチッチ

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投機バブルで彩られた束の間の輝き

中国発のキャラクター「ラブブ」を手がける泡泡瑪特(ポップマート)の株価が急落している。

2024年12月29日までに8月のピークから4割超も下落したというのだ。

希少性を売りに投機的な取引で盛り上がったものの、供給増加で中古価格が崩れると一気に失速。わずか1年程度で熱狂が冷めた格好である。

この事態を見て、わたしはある日本生まれのキャラクターを思い出さずにいられなかった。

1974年に誕生し、きょうも変わらず世界中で愛され続ける「モンチッチ」だ。

モンチッチは発売当初から日本で爆発的な人気を獲得した。翌1975年にはオーストリアへの輸出を皮切りに、ドイツ語圏を中心に欧州全域、そしてアメリカへと展開。1980年代には世界的な人気キャラクターとなり、これまでに累計7000万体が販売されている。

50年という時間をかけて築き上げた実績。対するラブブは2024年に突如として脚光を浴び、2024年には株価が4倍に急騰したものの、わずか数か月で失速の兆しを見せている。

文化として根付くか 投機の対象で終わるか

両者の決定的な違いは、ビジネスモデルにある。モンチッチは製品を手に取った人々が愛着を持ち、長く大切にする文化を育んできた。発売当時のクリスマス商戦では、顔を見比べて自分だけのモンチッチを選びたいという顧客の声があった。

足の裏に自分の名前を書いて、きょうも大切に持ち続けている人がいる。こうした一つ一つのエピソードが、モンチッチというキャラクターの価値を支えてきた。

一方ラブブは、限定品の高額取引が注目を集めた。中国では6月にオリジナル版のフィギュアが108万元(約2200万円)で落札され、品薄状態が投機熱を煽った。BLACKPINKのリサらセレブが身につけたことで人気に火がついたというが、実際に商品を手にした一般の人々がどれほどいたのか。

展示すら見たことがないという声も上がっている。

投機対象として買われた商品は、供給が増えれば価値が下がる。中国で商品供給が増加すると中古価格が崩れ、米国の年末商戦でも売れ行きが鈍化した。

投機的な資金が引いた途端、ブームは終わりを告げようとしている体裁だ。

50年の重みと1年の軽さ

モンチッチには「空白の10年」と呼ばれる時期があった。1985年から1995年まで、フランスを除いて出荷を休止せざるを得なかった。

それでも1996年の販売再開後、モンチッチは着実にファン層を広げ、2004年には結婚式イベントを開催し、ベビチッチという新キャラクターを生み出した。

2010年代には女子高生とのコラボで若年層へのアピールに成功し、50周年を迎えた2024年には地域振興プロジェクトにも乗り出している。

ブームが去っても諦めず、地道にファンとの関係を築き直し、新しい世代に愛されるキャラクターへと進化を続けてきた。これが日本発のキャラクタービジネスの強さだろう。

対するラブブは、投機バブルの崩壊とともに失速しつつある。

ポップマートの株価は2兆円近い時価総額を失った。JPモルガンは投資判断を引き下げ、材料不足を指摘している。

中国ではラブブの模倣品やジェネリック商品が次々と登場し、ブランド価値の毀損が進んでいるという。

長期的視点で育てる文化の価値

玩具やキャラクターは本来、人々の生活に寄り添い、思い出とともに大切にされるべきものだろう。モンチッチが50年間愛され続けているのは、製品の質と愛着を育てる仕組みがあったからにほかならない。

東京・葛飾区の新小岩駅前には2022年にモンチッチの銅像が建立され、地元に根ざしたキャラクターとして親しまれている。

ラブブの失速は、短期的な利益追求と投機的なマーケティングの限界を示している。希少性を演出して高値で取引させる手法は、一時的な注目を集めるかもしれないが、真のファンを育てることはできない。

商品が手に入らなければ、人々はそのキャラクターへの興味を失ってしまう。当然の帰結だ。

日本の玩具メーカーが半世紀かけて築いてきたブランド価値と、中国企業がわずか1年で作り上げたバブル。

その対比は、文化として根付くビジネスと投機対象として消費されるビジネスの違いを如実に物語っている。

モンチッチのような長寿キャラクターが今後も生まれ続けることを願ってやまない。

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