
この職員は一体何をやっているんだ。
原子力規制庁の職員が中国・上海で業務用スマートフォンを紛失したというニュースを見て絶句した。
しかもそのスマホには、核セキュリティー担当部署の職員名や連絡先など、絶対に漏れてはならない機密情報が入っていたという。
昨年11月3日、この職員は私用で上海を訪れていた。
空港で保安検査を受ける際に手荷物を出したときに紛失したらしい。3日後にやっと気づいて空港に問い合わせたが見つからず、今でも行方不明のまま。
現時点で悪用された形跡はないというが、情報漏えいの可能性が否定できないため、個人情報保護委員会に報告したという。
あまりにも危機感がない
わたしが驚いたのは、この職員の危機感のなさである。核セキュリティー担当部署というのは、国内の原子力施設にある核物質を守るための対策を担当する極めて重要な部署だ。テロ攻撃を防ぎ、核物質が盗まれないよう情報管理を徹底しなければならない。だからこそ職員の氏名や連絡先は原則公表していないのだ。
そんな機密情報が入った業務用スマホを、よりにもよって中国に持っていくとは。中国といえば、日本にとって最大の安全保障上の脅威だ。尖閣諸島周辺での軍事的挑発を続け、台湾有事への懸念も高まっている。
そんな国に、核関連の機密情報が入ったスマホを持っていくこと自体が異常だろう。
しかも保安検査の際に紛失したという。中国の空港といえば、情報機関の監視が厳しいことで知られている。
スマホを手放した瞬間、複製される可能性だって十分にある。3日後に気づいたというのもあまりにも遅すぎる。業務用の機器なのに、3日間も紛失に気づかないとは一体どういう管理体制なのか。
スパイ防止法がない日本
さらに問題なのは、こうした事態に対して日本の法体系が極めて脆弱だということだ。
現在の日本には、スパイ行為そのものを包括的に処罰する法律が存在しない。
特定秘密保護法はあるが、これは情報を漏らした後に適用されるもので、未遂や準備段階では処罰できない。
高市総理は就任以来、スパイ防止法の制定を強く主張してきた。自民党や維新の会、国民民主党も法整備に前向きだ。
わたしも全面的に賛成する。
日本は国際的に「スパイ天国」と呼ばれているのだ。先進国でスパイ行為を処罰できる法律がない国は、日本くらいしかないという。
これは異常事態だ。
1985年にもスパイ防止法の制定が試みられたが、野党やマスコミの反対で廃案になった。「治安維持法の復活だ」「報道の自由が侵害される」といった批判が殺到したのだ。しかし40年が経ち、国際情勢は激変した。中国やロシアによる諜報活動は活発化し、サイバー攻撃や技術窃取も日常茶飯事になっている。
今回の事案がスパイ行為だったかどうかはまだ分からない。だが、結果的に核関連の機密情報が中国に渡った可能性がある以上、徹底的に調査すべきだ。そして職員の氏名と所属を公表し、国家公務員法違反で逮捕するべきだろう。
原子力規制庁は「海外渡航時のスマホ携行ルールを整理したい」などと悠長なことを言っているが、ルールの問題ではない。国家公務員としての自覚と責任感の問題だ。こんな職員を野放しにしていたら、国民の安全は守れない。厳重な処分が必要だ。
わたしたちの税金で運営されている行政機関が、こんな杜撰な情報管理をしているとは情けない。
日本の安全保障は本当に大丈夫なのか?
スパイ防止法の一日も早い制定と、この事案の徹底解明を強く求める。
国民の命と安全がかかっているのだから。

