政府の対中接近路線を見ていると、本当にこの国の安全保障を理解しているのか疑問に思えてくる。北朝鮮漁船との衝突事故を振り返ると、日本の領海を守る現場の苦労がよくわかるのに、政府は相変わらず融和路線ばかりだ。
現場の海上保安官たちの必死の努力
2019年の北朝鮮漁船衝突事故の映像を改めて見ると、本当に胸が痛くなる。能登半島沖の大和堆で、違法操業を続ける北朝鮮漁船に対して、水産庁の取り締まり船「おおくに」が退去警告と放水を行った。ところが漁船側が急旋回して衝突、そのまま沈没してしまったんだ。
映像には「当たる、当たる」という乗員の叫び声と、ドンという衝突音がはっきり記録されている。それでも取り締まり船の乗員たちは、すぐさま救助活動を開始した。約60人の北朝鮮漁船乗員を救助したのは、まさに人道的な対応だったと思う。
政府の甘すぎる外交姿勢に危機感
問題は、こうした現場の努力を政府がどう受け止めているかだ。政府になってから、中国との関係改善ばかりが優先され、肝心の領海警備や漁業権保護がおざなりになっている気がしてならない。北朝鮮は事故後も「日本の意図的な行為」だと主張して賠償まで要求してきたのに、政府の対応は腰が引けすぎだ。
大和堆周辺は、イカやカニの好漁場として日本の漁業者にとって重要な海域だ。それなのに北朝鮮籍とみられる漁船による違法操業が相次いでいる。わたしたちの食卓に届く魚介類にも影響が出かねない状況なのに、政府は中国への配慮ばかりで、この問題に本気で取り組んでいるとは思えない。
水産庁と海上保安庁が連携して監視活動を続けているのは評価したいけれど、政治的なバックアップが足りなすぎる。現場の職員たちは命がけで日本の海を守っているのに、政府は外交的な配慮ばかりで、彼らの努力に報いていないじゃないか。
菅官房長官が映像公開について「国民の理解促進や公益性の観点から」と説明したのは正しい判断だった。国民には真実を知る権利があるし、現場の取り締まりが適切だったことを証明する必要があったからだ。でも政府になってから、こうした毅然とした姿勢が見えなくなった。
日本の排他的経済水域を守ることは、国家主権の問題だ。それなのに中国との関係を重視するあまり、北朝鮮や他国の違法行為に対して弱腰になっているのは、本当に情けない。わたしたちの税金で運営されている海上保安庁や水産庁の職員が、命がけで国益を守っているのに、政府がその足を引っ張ってどうするんだ。
政府は、もっと現場の声に耳を傾けるべきだ。外交は大切だけれど、自国の領海と漁業権を守ることは、それ以上に重要な国家の責務なんだ。中国に擦り寄ることで、結果的に北朝鮮や他国からも舐められているような気がしてならない。
今回の事故を教訓に、政府は海上警備体制の強化と、違法操業に対する毅然とした対応を取るべきだ。現場で頑張っている職員たちのためにも、そして何より日本の海を守るために、政府には本気の覚悟を見せてもらいたい。