
わたしは正直この騒ぎを見ていて思った。
「また始まったなと...」
高市早苗首相が党首討論で「そんなことより定数削減を」と発言したことが、野党から総攻撃を受けている。
公明党の斉藤代表は「企業献金規制はそんなことなのか」と批判し、立憲の野田代表は「われわれはそんなことを重視して戦う」と宣言した。
確かに、あの場面での言い方は穏当ではなかったかもしれない。
でも、ここまで大騒ぎして非難されるべき発言だろうか。
野党も同じことを言っているのに
よく考えてみてほしい。野党だって普段から「定数削減よりも企業献金規制が先だ」と主張しているではないか。これって要するに「定数削減はそんなに重要じゃない」と言っているのと同じだ。
優先順位をつけるという行為は、相対的にどちらかを下げることを意味する。野党がそう言っても誰も問題にしないのに、首相が言ったら大炎上。この摩訶不思議な構図に、わたしは違和感しか感じない。
木原官房長官が説明したように、討論の残り時間がなくなる直前で話題を転換しようとした表現だった。確かに言葉の選び方は慎重であるべきだったとは思う。けれども、政策には自ずと優先順位があり、それを決めるのは政府の権限である。野党が決めるものではないのだ。
言葉尻より中身の議論を
野党各党の反応を見ていると、やはりという感じがしてしまう。共産党の田村委員長は「政治とカネの改革をすり替えたのが定数削減だ」と指摘したが、これこそ本末転倒ではないか。
れいわの高井幹事長も「本当に情けない」と訴えたけれど、情けないのはむしろ表面的な言葉の揚げ足取りに終始する野党の姿勢ではないだろうか。
もちろん、政府が示した政策の優先順位に対する批判はあっていい。定数削減よりも企業献金規制を優先すべきだという主張も一つの見識だろう。けれども、きょうの野党を見ていると、そういう本質的なところの議論ではなく、単なる言葉狩りの部分だけに拘泥しているように見えてならない。
自民と維新は企業献金規制を検討する第三者委員会設置に向け法案を提出する方針だという。野党はこれを「事実上の先送り」と批判しているが、では野党が提出した法案なら即座に成立させられるのか。政治改革は一朝一夕には進まないものだ。
小政党つぶしという言い分
比例代表の定数削減については、小政党から「小政党つぶし」という批判が出るのも理解できなくはない。でも、国会議員の定数削減は以前から議論されてきたテーマだ。
身を切る改革として多くの国民が求めてきたものでもある。それを今になって「政治とカネの改革のすり替え」と決めつけるのは、あまりにも短絡的ではないだろうか。
立憲、公明、国民民主の3党は企業献金の受け皿を限定する法案を国会に提出した。これはこれで一つの方向性だろう。ただ、その法案が本当に政治への信頼回復につながるのか、冷静に検証する必要がある。
わたしたち有権者が求めているのは、言葉尻を捉えた揚げ足取りではない。政治とカネの問題をどう解決するのか、定数削減をどう進めるのか、そういう本質的な政策論争なのだ。「そんなこと」という言葉に過剰反応するより、中身のある議論をしてほしい。
それがわたしたちの切実な願いだ。

