
びっくりするくらい静かだった。
やはりどうしようもないオールドメディアさん。
トランプ大統領が台湾との関係を強化する法案に署名したという知らせを、日本のテレビはほとんど報じていない。
でもね、これって実はものすごく大きな出来事。
12月2日、トランプ大統領が署名した「台湾保証実施法」は、2020年の「台湾保証法」を改正したもの。
何が変わったかというと、米国務省に対して台湾との交流に関するガイドラインを少なくとも5年に1回見直すよう義務づけたのだ。
たった一度の見直しから定期的な見直しへ、これがどれだけ重要か。
レッドラインを越えた米国の決断
1979年の米中国交樹立以来、アメリカは中国に配慮して台湾との公式な交流に様々な制限を設けてきた。台湾の高官がワシントンを訪問することも、米国の政府高官が台湾を公式訪問することも、実質的にタブーとされてきたのである。
しかし今回の法律は、そうした制限を定期的に見直し、必要に応じて撤廃することを求めている。つまり、台湾当局者が米連邦機関を訪問して会議を行うことが可能になるということ。これは事実上の関係正常化への第一歩だ。
中国外務省の報道官は即座に反発した。「台湾問題は中国の核心的利益の中核であり、米中関係で越えてはならない第1のレッドラインだ」と。そう、中国にとってこれは明確なレッドライン越えなのである。
高市首相の発言と重なるタイミング
思い出してほしい。つい先月11月7日、高市早苗首相が国会で台湾有事について「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうる」と答弁した。
この発言に中国は激怒し、日本産水産物の輸入停止や渡航自粛の呼びかけなど、矢継ぎ早に制裁措置を打ち出してきた。
そんな中でのトランプ大統領の署名。偶然ではないだろう。アメリカは日本の同盟国として、中国の圧力に屈しないというメッセージを送っているのだ。
わたしが不思議でならないのは、日本のメディアがこの法案の意味をほとんど報じないこと。台湾海峡の安定は日本の安全保障に直結する問題である。台湾と最も近い与那国島までの距離はわずか110キロメートル。
台湾には数十万人の日本人が居住し、頻繁に渡航する人も多い。台湾海峡は日本のエネルギー輸送路でもある。
オールドメディアが伝えない本質
テレビのニュースでは「中国が反発」という見出しばかりが目立つ。でも、なぜアメリカがこのタイミングでこの法案に署名したのか、それが日本にとってどんな意味を持つのかという本質的な議論はほとんどない。
台湾の頼清徳総統府は「民主主義、自由、人権といった共通の価値観に基づく米台関係の堅実さを象徴している」と歓迎のコメントを発表した。台湾外交部の林佳龍外相は、指針の見直しが頻繁になれば台湾当局者が米連邦機関を訪問して会議を行うことが可能になると期待を示している。
これは単なる外交儀礼の話ではない。民主主義陣営が連帯を強めているということなのだ。
中国は「一つの中国」原則を掲げ、台湾を自国の領土と主張し続けている。そして軍事力を背景に台湾への圧力を強めている現実がある。
そんな中で、アメリカが台湾との関係を制度的に強化する決断をしたことの重みを、わたしたちはもっと真剣に受け止める必要がある。
トランプ大統領は来年4月に中国を訪問する予定だという。その前にこの法案に署名したことは、対中政策において台湾支援が譲れない一線だと示したということ。
高市首相の発言もまた日本として台湾海峡の平和と安定が死活的に重要だと認識しているからこその答弁だったのではないか。
平和を守るためには、時に毅然とした姿勢が必要だ。
中国の圧力に怯えて何も言えなくなるのではなく、言うべきことは言う。
そういう覚悟が、きょう求められているのだと思う。
高市内閣にはそれを突き通す強さがある。

