
12月10日世界人権デーに駐日フィンランド大使館がXに投稿した。
「人権は自由 平等 そして正義の基盤です 立ち上がり 声を上げましょう 人権を守りましょう」
その同じ日、自国のミス・フィンランドがアジア人差別でタイトルをはく奪されたばかりだというのに、である。
フィンランド人この厚顔無恥な投稿に怒りを覚えた。
人権を守れと世界に説教する前に、まず自分の国のアジア人差別問題をどうにかしてくれ。
ミス・フィンランドの苦しすぎる言い訳
今年9月にミス・フィンランドのグランプリに輝いたサラ・ザフチェ氏、22歳。彼女がSNSに投稿した写真が12月初旬に拡散され、大炎上した。
両手の人差し指で目じりを吊り上げ、笑顔を浮かべる写真だ。添えられたキャプションには「中国料理」とフィンランド語で書かれていた。
欧米圏で目を吊り上げるジェスチャーはアジア人に対する典型的な差別表現である。
これは誰もが知っている事実だ。それなのに、サラ氏の釈明は実にお粗末だった。
「レストランで頭痛と目の痛みに襲われ、こめかみをこすって目を伸ばした」そうだ。
友人が面白がって撮影し、「中国料理」というキャプションも友人が勝手に付けたという。頭痛のマッサージだと言い張るなら、なぜあんなに楽しそうに笑っているのか。なぜ「中国料理」という文言が添えられているのか。
わたしたち日本人を含むアジア人は、欧米でこの「つり目ジェスチャー」による差別を何度も経験してきた。
サッカー選手やセレブが同じことをして謝罪に追い込まれた事例は枚挙にいとまがない。
それでも繰り返されるのは、アジア人への差別意識が根深く残っているからだ。
サラ氏は後に謝罪したが、批判は収まらなかった。彼女が別の機内動画で「ギャングは投げつける一方、わたしはビジネスクラスに」と発言していたことも掘り起こされ、さらに炎上した。
結局、ミス・フィンランド協会は12月11日、サラ氏のタイトルはく奪を発表した。
協会の声明は明確だった。
「いかなる形での人種差別も決して許されない」「国家および国際的な代表役を担う場合、行動と責任は切り離せない」と。この判断は妥当である。
極右国会議員まで加わった開き直り
だが、問題はここからだ。フィンランドの連立与党「フィン人党」所属の国会議員、ユホ・エーロラ氏がサラ氏を擁護したのである。
しかもその方法が信じられない。
エーロラ氏は12月12日、自身のFacebookのプロフィール写真を、サラ氏と同じように両目を吊り上げ、歯をむき出して笑う写真に更新した。そして「私はサラ!」と綴ったのだ。
極右とも称されるフィン人党の国会議員が、差別ジェスチャーを模倣して連帯を示す。これが意味するのは、フィンランド政界の一部に「アジア人差別は差別じゃない」という認識が存在するということだ。
エーロラ氏はメディアのインタビューで「頭痛のせい」というサラ氏の主張を繰り返した。
国会議員ともあろう人物が、明らかな差別行為を頭痛で正当化しようとする。呆れを通り越して、恐ろしくなる。
日本のXでは当然ながら批判が殺到している。「人種差別バリバリ描写の昔のハリウッド映画の日本人みたいなヤツをするんだ しかも白人男性の政治家 アジア人は差別していいと思ってるというか、アジア人差別という意識もないんだろうね」という指摘は的を射ている。
フィンランドを「いつか訪れたい」と北欧に憧れていた日本人が「代表者がこんな行動をする国だと思うと行く気が失せた」とコメントしていた。
観光立国を目指すなら、こうした声を真摯に受け止めるべきではないか。
そして、極めつけが駐日フィンランド大使館のXポストである。12月10日の世界人権デーに「人権を守りましょう 世界中のすべての人々のために」と投稿した。自国でアジア人差別問題が炎上している最中に、だ。
この投稿を見て、わたしは深い失望を感じた。フィンランドが本当に人権を大切にする国なら、まず自国民のアジア人に対する差別意識と向き合うべきだろう。きれいごとを並べる前に、足元を見てほしい。
人権先進国と評されることが多い北欧諸国だが、実際にはアジア人差別が根強く残っている。今回の騒動は、その現実を改めて浮き彫りにした。
フィンランドが真に人権を尊重する国であるなら、アジア人差別を「ジョークで済ませる」姿勢を改めなければならない。
頭痛という苦しい言い訳で逃げ切れると思っているなら、それは大きな間違いだ。
わたしたちアジア人の尊厳は、そんなに軽いものではない。

