
12月18日の衆院法務委員会で、立憲民主党の米山隆一氏が旧姓通称使用法制化に反対する質問を行った。
その理由が「スパイ活動の際に問題になる」というものだ。
最初にこのニュースを見た時
「アホか!」のひと言しか思い浮かばなかった。
既に存在する複数の名前という現実
米山氏は「佐藤花子さんで活動した人が、ちょっと田中花子さんでやったことを確認できなくなる」と述べ、セキュリティークリアランス制度との関連で懸念を示した。
複数の呼称を持つことが問題だというのなら、なぜ通名制度には言及しないのか?
在日韓国人や在日中国人の多くは、本名とは別に日本風の通名を使用している。
これこそまさに「複数の呼称を持つ人」の典型例ではないか。通名は住民票にも記載され、公的書類にも使用できる法的効力を持つ。
2013年の民団調査によれば、在日韓国人の70.9%が職場や取引先で通名のみを使用しているという。本名の使用率はわずか17.8%だ。
米山氏の論理に従えば、「金正男」という本名の人が「山本太郎」という通名を使っていたら、スパイ活動の際に確認できなくなる。
極めて不都合な事態である。
スパイ防止法の観点から見ても、旧姓通称使用法制化よりも通名制度の方がはるかに大きな問題を孕んでいる。
しかし立憲民主党は、通名制度の廃止を主張したことがあるだろうか。答えは否だ。むしろ通名制度を擁護する立場を取ってきた。
旧姓通称使用法制化に反対するなら、まず通名制度の整合性を説明すべきだ。
パフォーマンス優先の質問内容
そもそもセキュリティークリアランス制度は、機密情報へのアクセス権限を持つ者の信頼性を調査・確認する仕組みである。適性評価では、家族の国籍を含む個人情報や過去10年の海外渡航歴、借金の有無などを徹底的に調べる。
旧姓を使っていようが通名を使っていようが、本人特定は可能だ。マイナンバーや戸籍、指紋など、複数の方法で同一人物であることを確認できる。
米山氏の質問は、セキュリティークリアランス制度の基本すら理解していないことを示している。スパイ防止法の議論をするなら、まず制度の正確な理解が前提だ。
2024年5月に成立した重要経済安保情報保護法では、適性評価の対象者について詳細な調査を行うことが定められた。評価対象者の同意のもと、家族関係、渡航歴、経済状況などを総合的に審査する。
旧姓の使用が審査の妨げになるという主張は、制度の実態を無視した暴論である。
立憲民主党は選択的夫婦別姓制度導入の法案を国会に提出している。米山氏自身もその立場から質問したはずだ。
ところが旧姓通称使用法制化には反対する。選択的夫婦別姓が実現すれば、結婚しても旧姓を名乗り続ける人が増える。これは米山氏が懸念する「複数の呼称を持つ人」とどう違うのか。
論理が完全に破綻している。
おそらく米山氏は、支持者向けのパフォーマンスとして質問したのだろう。
セキュリティークリアランスという専門的な話題を持ち出せば、テレビに映る時間も増える。野党議員として政府を追及している姿を見せられる。
しかし、その質問内容は整合性を欠き、政策の理解も不十分だ。
わたしたち有権者が求めているのは、こうした表面的な追及ではない。
国の安全保障を真剣に考え、具体的な政策を提案できる政治家である。
米山氏の質問を聞いて、わたしは深いため息をついた。野党第一党である立憲民主党が、このレベルの質問で国会の時間を浪費している。
これでは建設的な議論など望むべくもない。
きょうも国会では、同じような光景が繰り返されているのだろう。
辟易する...

