
123万人
ちなみに、さいたま市の人口は124万人だ。
この数字を聞いて、何を感じただろうか?
政府が12月23日に示した外国人労働者の受け入れ上限案は
2028年度末までに特定技能と育成就労制度で合計123万1900人にのぼる。
人手不足の解消が目的だというが大きな疑問が湧いてくる。
生産性向上で減らせたはずの数字
注目すべき点がある。特定技能の上限は従来の82万人から80万5700人へと、わずかだが下方修正されたのだ。その理由は、AIなどによる生産性向上を見込んだからだという。
ならば、なぜ育成就労で42万6200人も必要なのだろうか。生産性向上で対応できる部分があるなら、外国人労働者の受け入れ数をもっと抑制できるはずではないか。技能実習生が現在約44万9000人いるから、ほぼ同規模で引き継ぐという発想にしか見えない。
政府は分野ごとに人手不足の数から生産性向上や国内人材確保で補える数を引いて算出したというが、その計算式は本当に妥当なのだろうか。わたしたち国民には詳細が見えてこない。透明性が欠けている。
日本人の雇用機会が奪われる不安
最も懸念されるのは、日本人の雇用への影響だ。工業製品製造業で31万9200人、建設で19万9500人、飲食料品製造業で19万4900人——これだけの規模の外国人労働者が入ってくる。
確かに政府は「日本人の雇用に悪影響を及ぼさないよう設定する」と説明している。上限に達したら受け入れを停止するとも言う。しかし、その判断基準は明確なのだろうか。
若者の就職難や地方の雇用問題が深刻化している今、外国人労働者の大量受け入れが本当に必要なのか。賃金の安い外国人労働者が増えれば、日本人の給与水準にも影響が出るのではないか。そんな不安を抱える人は少なくないはずだ。
介護分野では16万700人を受け入れる計画だという。介護職の待遇改善こそが先決ではないのか。日本人が働きたいと思える環境を整えることなく、外国人労働者で穴埋めする——そんな姿勢に疑問を感じる。
家族帯同で爆発的に増える外国人人口
さらに深刻な問題がある。特定技能2号では家族の帯同が認められているのだ。配偶者と子どもを日本に呼び寄せることができる。
しかも在留期間に上限がなく、更新を続ければ永住も可能だという。
つまり、特定技能2号で働く外国人労働者が80万人いれば、その家族を含めると実際の外国人人口は2倍、3倍に膨れ上がる可能性がある。
123万人という数字は、実質的にはその何倍もの外国人が日本に定住することを意味しているのだ。
わたしたちの街が根本から変わってしまう。そんな不安を感じるのは、わたしだけではないはずだ。
シンガポールに学ぶべき厳格な管理
シンガポールを見てほしい。シンガポールは人口の約3割が外国人という、日本以上に外国人労働者に依存している国だ。
しかし、その受け入れ方針は日本とはまったく異なる。
シンガポールでは、外国人労働者を「高度人材」と「低技能労働者」に明確に区別している。低技能労働者には家族帯同を一切認めていない。Work Permitと呼ばれる労働許可で働く外国人は、妊娠が判明すれば即座に国外退去だ。雇用主も、妊娠を知りながら政府に通告しなければ罰則を受ける。
なぜこれほど厳格なのか?
低賃金労働者が長期滞在して家族を呼び寄せれば、新たな貧困層を形成し、教育や社会保障で多額の負担が生じるからだ。シンガポールは、外国人労働者を「一時的な労働力」として扱い、「移民」とは明確に区別している。
企業が外国人を雇う際には、外国人雇用税を支払わなければならず、雇える人数にも上限が設けられている。こうした仕組みで、無制限な外国人労働者の流入を防いでいる。
日本の制度は甘すぎないか
日本を見るとどうだろうか。
特定技能2号で家族帯同を認め、永住への道を開いている。
これは実質的な移民政策だ!
育成就労制度では、1年から2年働けば同じ業種内での転職が認められる。これは技能実習制度での問題を改善する意図があるのだろう。ただ、転職が自由になれば、より良い条件を求めて外国人労働者が都市部に集中する可能性もある。地方の中小企業はどうなるのだろうか。
シンガポールのように、妊娠したら契約解除で帰国させる。家族帯同は禁止する。そうした厳格なルールがあってこそ、外国人労働者の受け入れは機能するのではないか。
わたしたちは、シンガポールの成功例から学ぶべきだ。外国人労働者と移民を混同してはいけない。労働力として期待するなら、一定期間働いたら帰国してもらう。家族を呼び寄せて定住させるなら、それは移民政策として正面から議論すべきである。
変わりゆく街への不安
テレビや新聞の報道を見ていると、人手不足の深刻さばかりが強調される。外国人労働者の受け入れ拡大は避けられないという論調だ。
しかし、本当にそうなのだろうか。女性や高齢者の活用、労働環境の改善、賃金の引き上げなどやるべきことはまだあるはずだ。
DXや自動化への投資を進めれば、必要な人数はもっと減らせるのではないか。
わたしたちが知りたいのは、外国人労働者を受け入れることで生じるリスクや課題についての率直な議論だ。治安への影響、社会保障制度への負担、文化や習慣の違いから生じる摩擦などこうした点についても、きちんと検証が必要である。
高市早苗総理は在留管理の厳格化を掲げているという。それは評価できる。ただ、受け入れ数の上限を設定しても、実際の運用が甘ければ意味がない。不法就労や税の未納対策を徹底できるのか。そこが問われている。
123万人という数字は、あくまで上限だと政府関係者は説明する。実際にはそこまで増えないというのだ。ならば、なぜそんなに大きな枠を用意するのだろうか。家族帯同を含めれば、実際の外国人人口はその何倍にもなる可能性がある。わたしには理解できない。
来年1月の閣議決定を前に、わたしたちはこの問題をもっと真剣に考える必要がある。外国人労働者の受け入れ自体を否定するつもりはない。ただ、日本人の雇用と生活が守られることが大前提だ。そして、わたしたちの街が見知らぬ場所に変わってしまわないよう、厳格な管理が不可欠である。
シンガポールのように、家族帯同を禁止し、妊娠したら帰国させる。
そうした明確なルールなしに、大量の外国人労働者を受け入れるべきではない。
人口減少社会において外国人との共生は避けられないテーマかもしれないが
だからこそ、拙速な判断ではなく、慎重で透明性のある議論を求めたい。
わたしたちの暮らしに直結する問題なのだから。

