
一国の首相に対して「汚い首を斬ってやる」なんて、これが外交官の発言だとは信じられない。
中国の薛剣・駐大阪総領事が高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁に対してXに投稿した内容は、もはや脅迫としか言いようがないのだ。

外交官として完全にアウトな暴言
高市首相が国会で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と答弁したのは、日本の安全保障上の立場を述べただけである。これのどこが挑発的なのか。わたしには全く理解できない。
それに対して薛剣氏は「覚悟ができているのか」と怒りのマークとともに投稿し、首を斬るという表現まで使った。外交官がこんな言葉を公の場で使うなんて、常識以前の問題だろう。もし日本の外交官が中国で同じことをしたら、即刻拘束されてもおかしくない。
しかも薛剣氏は今回が初めてではないのだ。衆院選の2日前にれいわ新選組への投票を呼びかけるような投稿もしていた。「政治が一旦歪んだら、国がおかしくなって壊れる」などと書き込んで、明らかに日本の選挙に干渉しようとしていたのである。
これは完全に一線を越えている。ウィーン条約で保護される外交特権を振りかざして、好き勝手やっているとしか思えないのだ。
「抗議」だけで終わらせる日本の弱腰
では日本政府はどう対応したか。木原稔官房長官は「極めて不適切」と指摘し、中国側に「強く抗議」したという。投稿の削除も要求した。
だが、それだけである。
国外退去を求める可能性について問われると、木原氏は「中国側から明確な説明がなされるよう求めていく」と述べるにとどまった。首相への脅迫投稿に対して、抗議と説明要求だけ。この対応、甘すぎないだろうか。
アメリカのグラス駐日大使は即座にXで「高市首相と日本国民を脅しにかかっている」と中国を批判した。同盟国の大使のほうが、よほど毅然とした態度を示しているではないか。
わたしたちの国は、自国の首相が脅迫されても、相手の外交官を国外退去させることすらできないのか。ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)として追放するのは、国際法上、当然認められている権利である。なぜそれを行使しないのか。
日本を舐めきっている中国
さらに驚くべきことに、中国外務省の報道官は薛剣氏の投稿を擁護した。
「台湾への武力介入を言い立てる危険な言論に対するものだ」と述べて、まるで日本側に問題があるかのような言い分なのである。
これが中国の本音だ。日本なら何を言っても許される。脅しても構わない。
どうせ抗議するだけで実効的な措置は取らないだろう――そう高を括っているのだろう。
中国の「戦狼外交」は2022年後半以降、欧州や豪州では影を潜めていたという。なぜか。「相手国の反発を呼び起こすばかりで、中国の狙った効果が得られない」からだ。つまり、欧米諸国は毅然と対応したから、中国も手法を変えざるを得なくなったのである。
日本が甘い対応を続ける限り、こうした暴言は繰り返されるだろう。外交には相互尊重が必要なのだ。一方的に舐められている現状を、わたしたちは受け入れるべきではない。
台湾や尖閣をめぐる緊張が高まる中、隣国との関係は確かに難しい。だからこそルールとマナーを守らせることが重要なのである。
今回の件で日本がしっかりとした対応を取らなければ、今後もエスカレートしていくに違いない。
日本政府は、もっと国民と国益を守る姿勢を示してほしい。
抗議だけで終わらせず、実効的な措置を取るべきなのだ。

