
わたしたちは騙されていたのかもしれない。
11月25日のトランプ大統領との電話会談後、テレビも新聞もXも「高市総理が叱られた」「日中問題で懸念を示された」と大騒ぎだった。
ところが12月に入ってアメリカ議会が出した答えは、まったく逆のものだったのである。
憶測が独り歩きした11月の報道
あの日のことを思い出してほしい。習近平国家主席がトランプ大統領と電話した翌日、高市総理にトランプ大統領から電話がかかってきた。この流れだけで、マスコミは飛びついた。「習近平→トランプ→高市という順番は何を意味するのか」と。
Xでは「トランプに怒られた?」「ハシゴを外されるんじゃないの」「注意を受けたんじゃないのか」という投稿があふれた。テレビのワイドショーはこうした「不安の声」を大きく取り上げる。野党議員は国会で「アメリカとの関係が危うい」と追及した。
玉川徹氏に至っては「これ天災じゃなくて人災でしょ」とまで言い切っていた。
でも、ちょっと待ってほしい。外務省の公式発表を見れば、トランプ大統領は高市総理を「極めて親しい友人」と呼び、「いつでも電話をしてきてほしい」と伝えていた。
会談は25分間にわたり、日米同盟の強化について幅広く意見交換された。どこに「叱責」の要素があったというのか。
アメリカ議会が示した明確な答え
そして12月に入って、事実が明らかになる。まず8日、下院外交委員会のアミ・ベラ議員ら民主党議員がトランプ大統領に書簡を送った。内容は「日本への支援を強化するよう求める」というものだった。中国が日本に対して経済的、軍事的な威圧を強めていると懸念を表明し、「日本は最も親密な同盟国の一つ」だと指摘したのである。
さらに17日、上院では共和党と民主党の超党派議員が日本を支持する決議案を提出した。リケッツ氏やクーンズ氏が主導し、元駐日大使のハガティ氏も名を連ねる。決議案は「中国による日本への経済的、軍事的、外交的な威圧を非難する」と明記した。日米安保条約第5条の揺るぎないコミットメント、尖閣諸島への適用範囲も再確認するとしている。
これが答えだ。アメリカ議会は共和党も民主党も、そろって日本を支持したのである。中国のレーダー照射事件、渡航自粛要請、水産物輸入停止といった一連の威圧行為を「不当」と断じた。「トランプが日本に懸念を示している」という報道は、いったい何だったのか。
見えてきた報道の構図
振り返ってみれば、おかしな点がいくつもあった。トランプ大統領は自ら高市総理に電話をかけてきた。これは通常、重要な同盟国への配慮を示す行動だ。もし本当に不満があったなら、わざわざ大統領自ら電話することはないだろう。
それに、11月の段階でアメリカ国務省は「中国の行動は地域の平和と安定に寄与しない」とコメントを出していた。小泉防衛相がヘグセス国防長官と電話会談した際も「深刻な懸念」を共有している。アメリカの立場は一貫して日本寄りだった。
にもかかわらず、マスコミと野党は「高市総理が孤立している」「アメリカから見放される」というストーリーを作り上げた。なぜか。答えは簡単である。彼らは高市政権を批判したかった。
わたしたちが問うべきこと
この一連の報道を見て、わたしは深く考えさせられた。マスコミは事実を報じているのか、それとも自分たちの望むストーリーに事実を当てはめているのか。野党は国民の利益を考えているのか、それとも政権批判のネタを探しているだけなのか。
アメリカ議会の超党派決議という「動かぬ証拠」が出た今、11月の報道を検証すべきだ。「憶測」と「事実」を混同した報道があったなら、それは訂正されるべきである。「トランプに叱られた」と報じたメディアは、今回の決議をどう報じるのか。同じ熱量で取り上げるべきではないか。
日米同盟は日本の安全保障の要だ。その同盟関係について、憶測や希望的観測で報じられては困る。わたしたち国民が正しい判断をするためには、正確な情報が必要なのだ。中国の威圧に対してアメリカがどう対応するかは、日本の将来を左右する重大事である。
今回の件で明らかになったのは、アメリカ議会の強固な日本支持だけではない。一部のマスコミと野党の報道姿勢の問題も浮き彫りになった。事実よりも政権批判を優先する姿勢、憶測を事実のように報じる手法。これらは「報道の自由」とは別物だろう。
わたしたちは冷静に事実を見極める必要がある。
11月の「叱られた報道」と12月の「超党派支持決議」。
この2つを並べれば、真実は明らかだ。
マスコミと野党が描きたかったストーリーと、現実は大きく異なっていた。

